【概 要】
「提案書を書く時間がなくて、案件に応募できない」——フリーランスなら一度は経験したことがある悩みではないでしょうか。クラウドソーシングや直接営業で案件を獲得する際、応募ごとに提案書(プロポーザル)を書く必要があります。1件あたり30分から1時間。本業の作業時間を削って書いているのに、採用されるのは数件に1件……これでは時間がいくらあっても足りません。
この記事では、知人のフリーランスWebデザイナー・佐藤さん(仮名)が、AIで提案書作成を自動化したことで応募できる案件数が増え、結果的に受注件数がほぼ倍になったという事例を、実際に使ったプロンプトとワークフローとともに紹介します。
もちろん「AIに丸投げすれば誰でも案件が倍になる」という魔法の話ではありません。何を仕組み化し、何を人間が最後にチェックするか——その線引きが結果を分けます。失敗した点も含めて、正直にお伝えします。
目次
- フリーランスを苦しめる「提案書地獄」
- AI提案書自動化の全体ワークフロー
- 実際に使ったプロンプト:案件分析編
- 実際に使ったプロンプト:提案書生成編
- Notionで「提案テンプレート」を資産化する
- Before/After:応募数・受注数はどう変わったか
- やってみてわかった注意点・失敗談
- まとめ:自動化すべきは「文章」ではなく「思考の型」
- FAQ
1. フリーランスを苦しめる「提案書地獄」

案件1件につき30分〜1時間が消える
クラウドワークスやランサーズ、あるいは企業への直接営業。フリーランスとして案件を獲得する手段はいくつもありますが、どの手段にも共通するのが「提案書(応募文)」の作成です。
佐藤さんの場合、Webデザイナーとして月に20〜30件の案件に応募していました。1件あたりの提案書作成に平均40分かかっていたとすると、月に13〜20時間が「提案書を書くだけ」に消えていたことになります。これは本来、デザイン作業や新規顧客対応に使えるはずの時間です。
「コピペ提案文」では通らない時代に
一方で、テンプレートをそのままコピペして送るような提案文は、発注者側にもすぐに見抜かれます。「この人、内容ちゃんと読んでないな」と思われた瞬間に、選考から外れます。
つまりフリーランスは、
- 件数をこなしたい(応募数を増やして母数を確保したい)
- でも1件ごとに個別対応したい(テンプレ感を出したくない)
という、一見矛盾する2つの要求を同時に満たす必要があります。この矛盾を解消する手段として、AIによる提案書自動化が機能します。
2. AI提案書自動化の全体ワークフロー

佐藤さんが実際に組んだワークフローは、次の4ステップです。
① 案件情報をコピー
↓
② AIに「案件分析」をさせる(Claude)
↓
③ AIに「提案書ドラフト」を作らせる(Claude/ChatGPT)
↓
④ 人間が最終チェック・固有名詞の確認・送信
ポイントは、「分析」と「文章生成」を別のステップに分けていることです。1回のプロンプトでいきなり提案文を作らせると、案件の本質を外した「それっぽい文章」になりがちです。先に案件を分析させてから、その分析結果をもとに文章を作らせることで、提案の精度が大きく変わりました。
それぞれのステップで実際に使ったプロンプトを、次の章から紹介します。
3. 実際に使ったプロンプト:案件分析編

ステップ②:案件情報をAIに分析させる
まず、案件の募集文をそのままClaudeに貼り付け、次のプロンプトで分析させます。
あなたは受注実績の多いフリーランスWebデザイナーのアドバイザーです。 以下の案件募集文を分析し、次の4点を整理してください。
【案件募集文】 (ここに募集文を貼り付け)
・発注者が本当に解決したい課題は何か(募集文に明示されていない部分も推測)
・この案件で評価されやすいポイント(スキル・経験・実績のうちどれを重視しているか)
・競合する応募者が書きそうな「ありがちな提案」の例
・その「ありがちな提案」との差別化ポイント
このプロンプトを使うと、募集文の表面だけでなく「発注者が本当に困っていること」が見えてきます。たとえば「ECサイトのデザイン改善」という募集でも、分析させると「実は売上が落ちていて、デザインよりCVR改善を求めている」といった裏側の課題が浮かび上がることがあります。
ここで得られた分析結果は、次の提案書生成ステップにそのまま渡します。
4. 実際に使ったプロンプト:提案書生成編

ステップ③:分析結果をもとに提案書を作る
ステップ②で得た分析結果と、自分のプロフィール情報をClaudeに渡し、次のプロンプトで提案書のドラフトを作成します。
あなたは案件獲得率の高いフリーランスのプロポーザル作成を支援するライターです。 以下の情報をもとに、クラウドソーシング向けの提案文を作成してください。
【案件分析結果】 (ステップ②で得た4点をそのまま貼り付け)
【自分のプロフィール・実績】 (経歴、得意分野、過去の制作実績、対応可能な範囲などを箇条書きで)
【希望条件】 (希望単価、対応可能な開始時期など)
条件:
・最初の2文で「この案件の課題を理解している」ことを示すこと
・テンプレートっぽい挨拶文(「初めまして、〇〇と申します」等)は避けること
・実績は案件の課題と関連づけて1〜2件のみ紹介すること
・文字数は400字程度に収めること
・最後に、次のアクション(ヒアリング・簡単な提案の提示など)を一言添えること
このプロンプトのポイントは、「実績を全部載せない」という条件を明示していることです。フリーランスの提案文でよくある失敗は、「自分はこんなにできます」と実績を並べすぎて、案件の課題への言及が薄くなることです。AIに「関連する実績を1〜2件だけ」と指示することで、案件ごとに焦点が絞られた提案文になります。
最後は必ず人間がチェックする
AIが生成したドラフトは、そのまま送信せず、佐藤さんは必ず次の3点を確認していました。
- 固有名詞・社名・担当者名が正しいか(AIが生成した文章に誤字や思い込みがないか)
- 金額・スケジュールなど数字に関する記述が、自分の実情と一致しているか
- 「AIっぽい言い回し」が残っていないか(「ぜひお力になれればと思います」のような汎用表現は手直し)
この最終チェックに使う時間は1件あたり5分程度。40分かかっていた作業が、分析・生成・チェックを合わせて10分程度まで短縮できたといいます。
5. Notionで「提案テンプレート」を資産化する

一度作ったプロンプトと実績文をストックする
提案書自動化を継続的に運用するうえで効果的だったのが、Notionにプロンプトと実績テキストをストックしておくという工夫です。
佐藤さんはNotionに次のようなデータベースを作成しました。
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 案件カテゴリ | LP制作 / ECサイト改善 / バナー制作 など |
| 使用する実績文 | カテゴリ別に2〜3パターンの実績紹介文 |
| 過去の提案文 | 採用された提案文と不採用だった提案文を両方保存 |
| 採用結果 | 採用 / 不採用 / 返信なし |
特に効果が大きかったのは、「採用された提案文」と「不採用だった提案文」を両方残しておくことです。これをまとめて定期的にAIに読み込ませ、「採用される提案文の傾向」を分析させることで、プロンプト自体の精度をさらに改善していくサイクルができます。
あなたは提案文の傾向分析の専門家です。 以下に「採用された提案文」と「不採用だった提案文」をそれぞれ複数貼り付けます。 両者を比較し、採用された提案文に共通する特徴を5つ挙げてください。 その特徴を、今後の提案文作成プロンプトにどう反映すべきか提案してください。
【採用された提案文】 (複数貼り付け)
【不採用だった提案文】 (複数貼り付け)
こうした分析と改善を月1回程度のペースで回すことで、提案文の「型」そのものが、佐藤さん自身の経験値として蓄積されていきます。
6. Before/After:応募数・受注数はどう変わったか

実際の数字の変化を、正直に共有します。
| 項目 | 自動化前 | 自動化後 |
|---|---|---|
| 提案書1件あたりの作業時間 | 約40分 | 約10分 |
| 月間応募件数 | 約20件 | 約45件 |
| 月間受注件数 | 約3件 | 約6件 |
| 受注率(応募件数に対する割合) | 約15% | 約13% |
注目してほしいのは、受注率(パーセンテージ)自体はほぼ変わっていないという点です。提案書の「質」が劇的に上がったわけではなく、「質を落とさずに件数を増やせた」ことが受注件数の増加につながった、というのが実態に近い理解です。
「AIで提案書の質が上がって受注率が爆増した」という話ではなく、「同じ質の提案を、より多くの案件に出せるようになった」という、地味だけれど再現性のある変化です。この「地味さ」こそが、自動化の本質だと感じています。
7. やってみてわかった注意点・失敗談

失敗談①:AIの「実績の盛り」をそのまま送ってしまった
初期の頃、AIが生成した提案文の中で、過去の実績を実際より大きく表現してしまっていたことに気づかず、そのまま送信してしまったことがありました。発注者から実績の詳細を聞かれた際に説明と食い違いが生じ、気まずい思いをしたとのことです。
AIは「説得力のある文章」を作ることが得意な一方で、事実の正確さまでは保証してくれません。数字や実績に関する記述は、必ず自分の目で確認することが欠かせません。
失敗談②:分析ステップを省略すると質が落ちる
時間がないときに、ステップ②(案件分析)を省略して、募集文から直接提案文を生成させたことがありました。結果、提案文の内容が一般的になり、その週の受注率は明らかに下がりました。
「分析」と「生成」を分けるという手順は、面倒に見えても結果に直結するということを、数字の変化で実感した出来事でした。
注意点:AIツールのコストは「投資」として見る
このワークフローを回すには、Claudeの有料プランが実質的に必要になります。月額の費用は発生しますが、1件あたりの作業時間が40分から10分に短縮された分、その時間を新規営業や本業のスキルアップに回せることを考えれば、回収できる範囲のコストといえそうです。
8. まとめ:自動化すべきは「文章」ではなく「思考の型」
今回の事例から見えてくるのは、AIで自動化すべきものは「文章そのもの」ではなく「案件を分析する思考の型」だということです。
提案文という「結果」をAIにそのまま作らせるのではなく、
- 案件の本質を分析する
- その分析結果をもとに文章を組み立てる
- 採用・不採用の結果を蓄積し、型自体を改善する
というサイクルを仕組み化することこそが、AI活用の本質です。これはフリーランスの提案書に限らず、ブログ記事の構成やSNS投稿の文案づくりにも応用できる考え方ではないでしょうか。
もし「提案書を書く時間がなくて応募数を増やせない」という状況にあるなら、まずは今回紹介した「案件分析プロンプト」だけでも試してみてください。1件分析してみるだけでも、案件の見え方が変わるはずです。
なお、今回のワークフローを実践するには、Claude Pro・ChatGPT Plus・Notionの有料プラン(Notion Plus)が役立ちます。それぞれ無料プランでも一部は試せますが、複数の案件を継続的に処理するなら、有料プランへの切り替えを検討する価値があります。
FAQ
Q1. AIに提案書を作らせると、案件が必ず増えますか?
A. 必ず増えるとは言えません。今回の事例では「受注率」は変わらず、「応募できる件数」が増えたことで受注件数が増えました。
Q2. AIが生成した提案文をそのまま送ってもいいですか?
A. おすすめしません。固有名詞・実績・金額などの事実情報は、必ず自分で確認してから送信してください。
Q3. Claude・ChatGPTのどちらを使うべきですか?
A. 今回の事例では「案件分析」にClaude、「文章生成」にChatGPTを使い分けていますが、どちらか一方だけでも同様のワークフローは構築可能です。
Q4. このワークフローはWebデザイナー以外でも使えますか?
A. 案件募集文をもとに提案文を作成する形式の仕事であれば、ライター・エンジニア・コンサルタントなど職種を問わず応用できます。
Q5. プロンプトはそのままコピペして使っていいですか?
A. はい。ただし【】内の項目は、ご自身の案件情報・プロフィールに置き換えてご利用ください。
【編集部より一言】
本記事の事例は、知人のフリーランスへの取材に基づくものです。受注件数・作業時間などの数値は本人の実感に基づく概算であり、職種・案件の単価帯・応募先のプラットフォームによって結果は異なります。成果には個人差があることをあらかじめご了承ください。