サービス業が勘違いしやすい“お客様目線”の本当の意味
■阪神阪急グループ 食材偽装事件
ちょうどこの原稿を書こうとしていた時期に起きた「阪神阪急グループ 食材偽装事件」。
市販のネギを“九条ネギ”と偽ったり、冷凍の魚を“鮮魚”と偽ったり、産地を誤魔化したりと、約7年間もの長期にわたって系列8ホテル計23店舗で偽装していたことが発覚し、大問題となっています。
こんな会社は偽装しやすい
個人的には、産地や食材が一級品じゃなくても「まぁ、旨けりゃいいじゃん」という感覚ですが、この問題の本質は「グループ全体におけるお客様への見下し」です。
社長はこの記者会見で「偽装ではなく、誤表示」と言い放ちましたが、
「誤表示」ということは、そこのシェフらは市販のネギと九条ネギの区別も付かない素人だと公言したのと同じです。
また、社長の辞任会見では辞任の理由を「グループ全体に迷惑をおかけした」と言ってしまい、
いやいや、迷惑をかけたのは消費者の方だろ!
とツッコまれる始末。
やれやれ、阪神阪急グループはしばらく、消費者から完全にそっぽ向かれてしまうでしょうね。
こうした発言が出るのは、明らかにこの社長およびスタッフらの視線がお客さんに向いておらず、会社や上司に向いているからです。
長年、バレなかったところから考えれば、シェフの技術は相当なものではないでしょうか?
しかし、不正を糾せない、顧客に目が向いていないのではプロとは言えないですね。
そもそも、媚へつらう職人にいい職人がいるはずもなく、よくある頑固親父のラーメン店が人気があるのは、
お客さんに冷たいのではなく、本当にお客さんのことをプロの視点から考えているから、お客さんに媚びへつらわないのです。
■お客様が神様ではなくなったコモディティー化
かつてのサービス業では、「お客様は神様です!」と教育されることがありましたが、
これをマーケティング的な言葉に直すと、「顧客のニーズに従え」ということです。
しかし、今時そんな意識で経営している優良企業はほとんどありません。
なぜならば、物質的に豊かになった現代は経済用語で「コモディティー化」と言って、
モノやサービスが市場にあふれているため「どれを買ってもまぁ似たようなもの」です。
ですから、あなたのお店で買う理由などどこにもなく、ニーズ自体が醸成しないのです。
本気でお客様のことを考えるなら、「あなたのお店じゃなければダメなサービスや商品」を作ることです。
そうすれば、あなたのお店じゃなければダメ!というお客様に喜ばれます。
コモディティー化に加え、顧客のニーズが多様化・細分化している時代ですから、
本気でその商売の良さを信じているのならば、
お客様を神様だと無意味に崇めるのではなく、
対等の目線に立たなければお客様は話を聞いてはくれません。
「みんなに喜んでもらえる商品・サービス」を提供するのではなく、
「あの人の役に立てる商品・サービス」は何かを考えることが大切なのです。
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